◆SPC取引に関する監査上の留意点を公表
JICPAが9月30日付で公表した「特別目的会社を利用した取引に関する監査上の留意点についてのQ&A」が掲載されています。その内容はこの経営財務やJICPAジャーナル12月号をみていただくとして、Q&Aの公表に合わせて、「特別目的会社を利用した取引に係る会計基準等の設定・改正に関する提言」を公表してという点に注目したいと思います。
一定の条件を満たした特別目的会社を連結から外していいという基準は、1998年の「連結財務諸表制度における子会社及び関連会社の範囲の見直しに係る具体的な取扱い」(企業会計審議会)で定められたものです。その前年の連結会計原則の見直しで、連結範囲に関する支配力基準が導入され、連結範囲に関しては考え方が厳しくなったわけですが、98年の「取扱い」により、特別目的会社については、逆に非常に甘くなってしまいました。
この「取扱い」では、「特別目的会社(特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律(平成10年法律第105号)第2条第2項に規定する特定目的会社及び事業内容の変更が制限されているこれと同様の事業を営む事業体をいう。以下同じ。)については、適正な価額で譲り受けた資産から生ずる収益を当該特別目的会社が発行する証券の所有者に享受させることを目的として設立されており、当該特別目的会社の事業がその目的に従って適切に遂行されているときは」連結に含めなくてもいいとされています。SPC法に基づいて設立された会社に限るというのなら歯止めになりますが、「同様の事業を営む事業体」となるといくらでも範囲は広がります。「適正な価額で譲り受けた資産から生ずる収益を当該特別目的会社が発行する証券の所有者に享受させる」や「事業がその目的に従って適切に遂行されている」という条件も、非常にあいまいです(一般の会社でも、建前上、事業がその目的に従って適切に遂行されていない会社などありえない)。
ただ、金融商品については金融商品会計基準で金融商品の消滅の認識基準が決められたこと、不動産については、会計士協会から実務指針(5%ルール)が公表されたことで、資産をオフバランスするかどうかのところで一定の歯止めがかかるようになりました。
ところが、開発型の特別目的会社(当初からSPCが物件の開発を行うタイプ)では、資産をオフバランスにするかどうかというところでの歯止めはなくなっています。今回のQ&Aでは、「監査上、経営者が採用した会計方針が取引の実態を適切に反映するものであるかどうかについて、実質支配力基準の適用も含め監査人が自己の判断で評価することが必要になりますので、留意が必要です。」(Q3)と書かれていますが、このような抽象的な表現では、監査人の判断には役に立ちそうもありません。
しかし、会計士協会のQ&Aで、企業会計審議会が定めた取扱いを勝手に変えることはできないので、Q&Aとは別にASBJへの提言を行ったのでしょう。
これでボールはASBJに投げられたわけですが、ASBJはどのように対応するのでしょうか。個人的な印象では、ASBJは監督官庁である金融庁と、スポンサーである産業界には弱い傾向がある(そして会計士業界は一段下にみている傾向がある)ようです。米国基準などを参考に厳しいルールを作ろうとしても不動産業界の反対でつぶされる可能性が高そうです。エンロンのようなSPCを使った大型不正事件が発生しない限り、進まないのではないでしょうか。
「特別目的会社を利用した取引に関する監査上の留意点についてのQ&A」等の公表について
Sunday, November 27, 2005
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